コラム
不妊治療に寄り添う鍼灸の力──“こころとからだ”を整えるサポート
1. はじめに

不妊治療は、身体だけでなく心や生活習慣、日々の体調管理に至るまで、多岐にわたる要素が関与する繊細な治療です。医療の進歩により、治療方法が発展していますが、それでもなお「なぜうまくいかないのか」「治療中の体調不良がつらい」「ストレスで心が持たない」などの声も多く耳にします。
私たち鍼灸院は、そんな不妊治療の現場において、医療では届かない“こころとからだ”のケアを行うサポートを提供しています。鍼灸が担うのは、医療の範疇外である部分、“未病”や心身のバランス調整です。
2. こんな方にこそ、鍼灸を
次のような方々に鍼灸は特におすすめです。
- 不妊治療をしているが、なかなか結果が出ない
- 毎回、採卵や移植のたびに疲れ切ってしまう
- 原因不明で自然妊娠を目指している
- 妊娠しても初期流産を繰り返してしまう
- 病院で「問題ない」と言われたが妊娠に至らない
これらの状況に対して、私たち鍼灸師はクリニックとは異なる視点で身体を整えるサポートを行います。身体と心の調和を取り戻すことで、治療に向けたベストな状態を作り出します。
3. 産婦人科と鍼灸院の役割分担

不妊治療において、クリニックと鍼灸院はそれぞれ異なる役割を担っています。病院だけでは手が届かない部分もあります。たとえば、治療中の副作用、精神的な負担、体調の乱れなど、“声にならない不調”が起こった時、鍼灸は心身の調和を取り戻すことを得意としています。クリニックと鍼灸院がお互いに補完し合うことで、より効果的な治療が実現します。
役割 | 内容 |
---|---|
産婦人科 | 数値に基づいた診断と治療(ホルモン療法、薬剤など)、不妊原因を特定して治療法を決定、妊娠を目指した具体的な治療の提供 |
鍼灸院 | 体質や精神面のサポート、ストレス軽減、体調改善、不妊治療の副作用軽減、免疫力や生命力を高める、妊娠に向けた体の基盤作り |
4. 鍼灸による不妊治療サポート
【1】着床しないとき、鍼灸でできるサポート

主な原因
- 子宮内膜が薄い・血流が悪い
- 着床のタイミングが合わない
- 黄体ホルモン不足(高温期の維持が困難)
- 自律神経の乱れやストレス
鍼灸の目的と作用
アプローチ | 効果 |
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骨盤内の血流改善 | 子宮内膜の厚みや質を良くし、着床しやすい環境をつくる |
自律神経の調整 | 子宮の収縮を穏やかにし、リラックス状態を作る |
黄体機能のサポート | 高温期の維持、ホルモンの安定を促す |
ストレス緩和 | 着床を妨げる精神的負担を軽減 |
タイミング
- 胚移植の前後に合わせて
- 排卵後〜高温期中
- 週1〜2回の定期的な施術が理想
【2】排卵しないとき、鍼灸でできるサポート

主な原因
- HPO軸の乱れ(視床下部・下垂体・卵巣の連携不良)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- ストレス、冷え、生活習慣
- ホルモン分泌異常(FSH/LH/エストロゲンなど)
鍼灸の目的と作用
アプローチ | 効果 |
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視床下部の働きの安定 | ホルモン分泌のリズムを整え、排卵が起きやすい状態に |
卵巣の血流改善 | 卵胞の発育を促進 |
PCOS対策(電気鍼など) | インスリン抵抗性改善 |
ストレス・冷えの改善 | 生活因子の改善による排卵促進 |
タイミング
- 生理終了後〜排卵期(卵胞期)に重点的に
【3】基礎体温が整わないとき、鍼灸でできるサポート

主な原因
- 排卵障害、黄体機能不全
- 自律神経の乱れ、ストレス
- 睡眠の質が悪い、冷え体質
鍼灸の目的と作用
アプローチ | 効果 |
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自律神経の安定 | 体温のガタつきを減らし、高温期の安定を図る |
冷えの改善・血流促進 | 子宮・卵巣機能の向上 |
ホルモンバランスの調整 | 排卵・黄体ホルモンの分泌を促す |
睡眠や生活リズムの安定 | 体温コントロールを安定化 |
タイミング
- 全周期を通して週1〜2回
- 低温期・高温期に合わせた施術
6. おわりに

不妊治療に疲れたり、行き詰まりを感じたりしたとき、「鍼灸でできることがあるかもしれない」と感じていただければ幸いです。鍼灸は、クリニックでは届かない“からだとこころの声”を丁寧に拾い上げ、あなたをサポートします。どんな小さな不調でもお伝えください。私たちは、あなたの不妊治療に寄り添い、最良の結果を共に目指していきます。